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白金堂ブログ

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新しい20年の扉が開く

 五山の送り火も終わりましたが、まだまだ残暑が厳しございます。先日、地元の新聞に興味深い記事がございましたので、紹介したいと思います。

  今年の夏に行きたい場所を尋ねると、1番が出雲、2番が沖縄の離島、3番が伊勢、4番が富士山-と報道された。富士山の頂上には奥宮が祭られ、出雲大社では5月に平成の大遷宮が斎行され、伊勢の神宮では62回目の式年遷宮(しきねんせんぐう)が10月に行われる。世界遺産のパルテノン神殿もマチュピチュの神殿も過去の遺跡である。けれども、伊勢も出雲も富士山も今なお祭祀(さいし)が続き、大勢の人が参拝し、神話が現代につながっていることは、我が国の大きな特徴である。

 さて我が国の正式な歴史を記す『日本書紀』に、天照大神(あまてらすおおみかみ)は伊勢の地が良いと選び、天から下りられたと明記される。その伊勢の神宮で今、お白石持(しらいいしもち)行事が行われている。これは、10月に神さまが移られる真新しい社殿の周囲に清浄な白い石を敷き詰める行事で、地元の人と7万人を超える全国から集まった人々が力を合わせ、感謝の思いで奉仕する。

 ところで、初任給で両親に贈った物の順位は、①食事②旅行③身に付ける物-と続く。また、ある女優さんがデビュー数年でお母さんに一軒家を贈り、孝行娘と話題になったことがある。食・衣・住をもって感謝の気持ちを表すことは、今も昔も、人に対しても神様に対しても共通している。伊勢神宮では毎日朝夕2回食事を供え、初夏と秋に衣替えの祭りを行う。そして20年に一度、建物を新築し、お召し物や身の回りの品々を新調して神様を迎える。これを式年遷宮といい、千三百年前、祖神の天照大神に感謝し、天武天皇が定められた。

 20年前の10月2日、内宮の遷御(せんぎょ)の儀に奉仕すべく装束を着て表に出ると、西の空があかね色に染まっていた。20年という歳月を閉じる美しい夕焼けであった。そして祭儀が始まり2時間、お出ましの用意が整うと、お役の神職は装束の袖を檜扇(ひおうぎ)でたたいて鶏の羽音をまね、カケコーと声を上げて夜明けを告げる。すると神様が新しい御殿へ進まれ、新しい20年の扉が開く。

 明治23年、第1回帝国議会の招集を祝い、東京の新聞社2社が、天の岩戸開きの神話の絵を掲載した。これは、天照大神に岩戸からお出ましを願い、神々が集まって評議して方策を決定した-という神話に、議会の起源を見たからに他ならない。先の参議院選挙で、私たちは決められる政治を選んだ。国民投票にも供え、長い歴史を大切にし、将来の礎となる、実り豊かな20年になるよう知恵と力を合わせたい。

                                             城南宮宮司

鳥羽重宏氏の言葉

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