竹林と水道管の腐食
先日、地元の新聞に興味深い記事が掲載されていたので、紹介したいと思います。
京都市西京区から乙訓地域にかけての西山一帯には竹林がそこかしこにあり、春先、タケノコ堀りが盛んに行われます。長岡京市にはタケノコ専門料理店もあるくらい名物になっています。柔らかいタケノコを口に入れると、春の到来を体で感じるようですがすがしいですね。
この竹林の下には海成粘土層(海の底にたまった粘土の層)が見られます。なぜ海から遠い地で海成粘土層が見つかるのでしょうか。
海成粘土層は、西山周辺に限らず京阪神地域に広く分布する地層の一部です。大阪層群は百数十万年前から数万年にかけて堆積してできました。当時繰り返し温暖期があり、そのたびに海面上昇したのです。こうして奥深い入り江が内陸まで延び、干潟のような場所に海成粘土がたまったと考えられています。つまり、海成粘土層はかつての温暖な気候の申し子なのです。
見た目は青みがかっており、鼻を近づけるとかすかに硫黄臭がします。硫化物を多く含むため、空気に触れると酸化し、硫酸に変って強酸性を示します。竹はこうした酸性土壌を好み、よく成長することがわかっています。
一方、強酸性のこの海成粘土層が、地下に埋設された鉄製の水道管やガス管などを腐食し穴を開ける直接の犯人であることも確かめられています。2011年に洛西地域で相次いだ断水も、海成粘土層によって水道管の腐食が速く進んだのが原因です。
海成粘土層は、竹林を育みつつ、水道管を腐食するという功罪を併せ持つのです。
京都新聞 京 天と地と人
(京都地学研究会 北陵高教諭 岡和田健文氏)